2年に及ぶディープインパクト劇場が幕を閉じました。今年の有馬記念は断然の一番人気1.2倍に支持されたディープインパクトが、もしかするとこれまでで最も強い競馬だったのでは?と思わせるようなレースぶりで快勝。自ら引退の花道を飾りました。
*表1. 2002年以降の有馬記念時計比較
| 年度 | 勝ち馬 | 時計 | 上り | 前3F-5F-後3F |
| '06 | ディープインパクト | 2.31.9 | 33.8 | 35.6-59.5-35.4 |
| '05 | ハーツクライ | 2.31.9 | 35.0 | 36.1-61.6-35.5 |
| '04 | ゼンノロブロイ | 2.29.5 | 35.3 | 35.9-60.3-35.6 |
| '03 | シンボリクリスエス | 2.30.5 | 35.3 | 35.0-58.4-35.6 |
| '02 | シンボリクリスエス | 2.32.6 | 34.6 | 37.2-62.1-35.8 |
勝ち時計は近年のそれとしては平凡ですが、勝ったディープインパクトが繰り出した上がり33.8は、'01の勝ち馬マンハッタンカフェが出した33.9を塗り替える、有馬記念史上最速の上がりでした。最後はほとんど追っていませんでしたから、追っていればおそらく33.5を切る時計は出ていたでしょう。昨年から「
中山では飛べない」という指摘をしていた当ブログですが、この点に関してはぐうの音も出ないほど強烈なしっぺ返しを食らってしまいました。脱帽です。
しかしながら最後の不安点として指摘した、「消耗戦への対応」という点に関しては、結局答えが出ないまま終わってしまった気がします。下記*表2.は昨年と今年の有馬記念のラップを並べたものです。
*表2. 今年と昨年の有馬記念ラップ比較
| 年度 | 時計 | 前3F-5F-後3F | ハロンラップ |
| '06 | 2.31.9 | 35.6-59.5-35.4 | 7.1-11.5-11.4-11.3-11.8-12.8-12.9-12.7-12.2-12.8-12.2-11.2-12.0 |
| '05 | 2.31.9 | 36.1-61.6-35.5 | 7.0-11.4-11.7-12.1-12.9-13.0-12.2-11.8-12.0-12.3-12.0-11.4-12.1 |
前半の1000m通過ラップが昨年よりも2秒以上も速く、上がりの3Fでもほとんど差がありません。にも関わらず走破時計が全く同じというのはどうでしょう。各ハロンラップを見てみると、昨年は前半1000m近辺で「12.9-13.0」といったんペースが緩んだものの、それ以外ではもっとも遅くても12.3という一貫した流れでした。ところが今年は前半1000mは11秒台連発のラップでしたが、以降は「12.8-12.9-12.7-12.2-12.8」という超がつくほどのスローペース。ゴール手前800m時点のラップが12.8ですから、ディープが一息に先行集団を飲み込んでしまったのももっともな話です。
ハナを切ったアドマイヤメインの前半1000m通過59.5というラップは、菊花賞の時の同58.7よりも遅いラップでした。前半に11秒台のハロンラップを4つ続けていますが、菊花賞の時は5つ続けていながら、上がり800m中でも3回の11秒台ラップを刻んでいたように、彼自身からすればそれほどきついペースではなかったはずです。しかしながら1000m通過後にいったん息を入れてからは、いつものような再加速する走りは見られず、4コーナー手前では早々に馬群に飲み込まれてしまう失速ぶりだったのは、香港遠征惨敗後の中1週で、状態面に問題があったとしか考えられません。
さらに2番手につけていたのがダイワメジャーだっというのも、この中だるみのペースを作り上げた要因のひとつだったと言って良いでしょう。ダイワメジャーの持ち味というのは、週中にも
指摘したとおり、緩急の差が小さいラップを機械的に踏み続けられること。淀みない流れを作りあげることで、他馬のスタミナや切れを殺ぐ戦法です。しかし今回は距離延長への不安もあったため、自分のペースとは違うスローなラップを刻む競馬内容。戦前不安視された距離を克服し3着を死守した結果を見れば、彼自身の成果としては好走なのでしょうが、けっしてディープインパクトを負かせるという競馬ではなかった気がします。
簡単にまとめてしまえば、アドマイヤメインのハイペース逃げはレースにとっては何の影響も及ぼさず、後続は必要以上にスローのラップを刻んだために、ディープインパクトの最も得意な上がり勝負に持ち込まれてしまったということでしょうか。同じ走破時計でも最速、最遅のラップ差が小さかった昨年の方が、流れ的には断然きついものだった気がします。出来が今ひとつだったと言われる当時のディープインパクトですが、今年以上に消耗戦の色合いが濃かった昨年2着に負けた事実は、出来だけが原因ではなかったのではないか?という疑問は、私の気持ちの中で永久に解決されないままになってしまいました。
とは言え、ディープインパクトが日本競馬史上最強と謳われる馬の1頭であることに異論はありませんし、彼のこれまでの素晴らしい戦歴を否定するつもりもありません。凱旋門賞にしても結果は3着入線失格でしたが、競馬に勝って勝負に負けた内容だったと私は思っています(「
凱旋門賞回顧/でもハリケーンランやシロッコには勝ったじゃないか。」参照)。これほどの馬はそう容易く出現することはないでしょうし、この目で現役時代の走りを見ることが出来たのは、非常に幸運だったと思います。次は父としてのディープインパクトに期待しましょう。