ジャパンカップはディープインパクトが1番人気に応え快勝。薬物問題等いろいろありましたが、とりあえずはそれらを払拭する復活劇になったというところでしょう。池江泰郎調教師や武豊騎手の勝利インタビューでも、どこかいつもと違う緊張した表情が目立ち、陣営がいかにプレッシャーのかかる中での戦いを強いられたのかが伺えました。ディープインパクトは引退まで残すところあと1戦。ラストランとなる有馬記念は、近年にない大注目の1戦になる予感がします。
*表1. 2001年以降のジャパンカップ時計比較
| 年度 | 状 | 勝ち馬 | 時計 | 上り | 前3F-5F-後3F | PCI3 | 勝馬PCI |
| '06 | 良 | ディープインパクト | 2.25.1 | 33.5 | 37.0-61.1-34.3 | 63.1 | 65.0 |
| '05 | 良 | アルカセット | R. 2.22.1 | 34.8 | 34.7-58.3-36.3 | 52.5 | 51.3 |
| '04 | 良 | ゼンノロブロイ | 2.24.2 | 34.3 | 35.9-59.4-34.0 | 55.7 | 58.0 |
| '03 | 重 | タップダンスシチー | 2.28.7 | 37.4 | 37.7-61.9-37.4 | 46.3 | 45.3 |
| '02 | 良 | ファルブラヴ | 2.12.2 | 35.6 | 36.6-60.9-36.0 | 50.1 | 49.6 |
| '01 | 良 | ジャングルポケット | 2.23.8 | 34.9 | 36.3-61.6-35.7 | 52.3 | 53.3 |
[注] 2002年は東京競馬場改修工事のため、中山競馬場で開催。
勝ち時計うんぬんより、指摘したいのはラップ面です。少頭数だったとは言え、前半3F-5F通過の「37.0-61.1」というのは、古馬最高峰のレースとしてはあまりに遅すぎでしょう。入りから言って「13.1-11.5」と誰も行こうとしない様子が伺えますし、その後も「12.4-12.1-12.0-
12.7-
12.7-12.4」ですから、残り800Mから11秒台の連発になったところで、このクラスの馬たちなら、特に厳しい流れだったわけではありません(800Mからの1Fも11.9ですし)。
過去25回のJCの歴史の中で、これより遅いラップが記録されたのは良馬場に限定すれば、'88(37.7-61.9)と'00(38.0-63.0)の2回だけ。この日の6Rに行われた500万条件の平場戦ですら、35.4-60.2で通過しているわけですから、いかに遅いペースだったかがわかると思います。
これだけ遅いと当然上がりの競馬になるわけで、PCI3値を見てみると63.1とズバ抜けて大きな数字となっています。次位が'91の58.4。東京競馬場良馬場で行われた際の平均値が52.12ですから、今年のPCI3値、とりわけ勝ったディープインパクトの65.0がいかに極端な数字だったかも伺えると思います。
唯一の救いはこれだけのスローの流れを最後方追走、直線でも大外に持ち出して楽勝したディープインパクトの強さだけだったと言っても過言ではありません。今年のJCはレース内容的には実に淡白。例年と比較すると見所の少ないレースだった気がします。
それにしてもディープインパクトがこれまで出走した芝良馬場のレースを調べてみると、今回のようなスローペースの上がり勝負がいかに多いかがわかります。
*表2. ディープインパクトの芝良馬場でのペース別成績
| 項目 | 着度数 |
| 1 | 2 | 3 | 他 | 勝率 | 連率 |
| 前5F -59.0 | - | - | - | - | - | - |
| 前5F -59.5 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 1.000 |
| 前5F -60.0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 1.000 |
| 前5F -60.5 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 1.000 |
| 前5F -61.0 | - | - | - | - | - | - |
| 前5F -61.5 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 1.000 |
| 前5F 61.6- | 2 | 1 | 0 | 0 | 0.667 | 1.000 |
|
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| 項目 | 着度数 |
| 1 | 2 | 3 | 他 | 勝率 | 連率 |
| PCI -36 | - | - | - | - | - | - |
| PCI -44 | - | - | - | - | - | - |
| PCI -52 | - | - | - | - | - | - |
| PCI -60 | 2 | 1 | 0 | 0 | .667 | 1.000 |
| PCI 61- | 7 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 1.000 |
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GIタイトルを6個も獲得し、凱旋門賞にまで駒を進めた馬のわりに、不思議といつもペースは緩く、上がり勝負の競馬ばかりになっているのがお分かりいただけると思います。先行して失速した凱旋門賞の敗戦も考えると、ディープインパクトの代名詞である「飛ぶ」と言われる強烈な末脚は、スローペースで前半脚をためているからこそ発揮できる芸当という可能性も、強ち「ない」とは言い切れないのかもしれません(もちろん他の馬は同じペースでもここまで「飛べる」わけではありませんが)。
阪神大賞典や宝塚記念で稍重のスタミナ勝負をこなしているとは言え、馬場が悪くてペースが上がらない中で要求される持久力と、良馬場のハイペースで凌ぎあう中で要求される持久力(例えば昨年のJCのような息の入らない流れ)とでは、全くの別物になってきます。それだけに良馬場のハイペースでの競馬を1度見てみたかったのですが、残されたチャンスは次走有馬記念ただ1走のみ。菊花賞のアドマイヤメインや、天皇賞秋のインティライミのような競馬をする馬が出てくれることを期待します(ちなみに私はその理由で、有馬記念ファン投票でインティライミを書きました)。
さてその有馬記念に向けてですが、海外遠征帰国初戦で馬体重がデビュー以来最軽量となる436キロでしたから、様々な周囲からのプレッシャーの中でいきなり極限のところまで仕上げ切ってしまった印象を受けます。楽な競馬だったので心配はいらないかもしれませんが、反動が出る可能性は十分に考えられるだけに、状態の見極めはかなり重要になってくると思います。
一方そのディープと明暗を分けたのがハーツクライです。こちらはレース前に「喉なり(=
喘鳴症)」を発症していることが発表されましたが、「レースへの影響はない」というコメントでした。しかしながらこのスローペースの中、いかに休養明けとは言っても、通過順「2-3-3-4」上りが自己ワーストの36.4という失速振りは影響がなかったとは到底思えません。陣営とオーナーの間で今後の方針について意見がまとまっていないようですが、こちらとて(現時点で)国内唯一のディープへ土をつけた馬ですし、国際GIも勝った馬という肩書きもあるわけですから、無理をさせず引退・種牡馬入りするのもひとつの選択肢ではないかと思うのですが・・・。好きな馬だけに複雑な心境です。
3着に入ったウィジャボードですが、道中は終始ディープインパクトの少し前に位置取り、出方を伺うような競馬でした。直線を向いてから一瞬ディープと接触するシーンもありましたが、通った位置(ディープ=外、ウィジャボード=内)を考えれば力負けは否めません。それでも上り33.9はディープインパクトに次いで出走馬中2番目。「最強牝馬」の称号に恥じない競馬だったと思います。
しかしそれ以上に立派だったのは、2着に入ったドリームパスポートでしょう。今までより前で競馬をするという新味を見せた上で、ディープインパクトに0.3差は褒められて良い内容だったと思います。プレ・レーティングでも昨年101だった馬が、ここを前に113まで伸ばしてきましたし、これで同期のメイショウサムソンに秋になってから3戦連続で先着。成長力も申し分なく、次走予定有馬記念はもちろん、来年のGI戦線の主役を張れる1頭になったと言えるでしょう。