ディープインパクトの禁止薬物検出問題ですが、各種報道等で次第に全体像が見えてきた感じですので、ここでまとめておきましょう。
ディープインパクト禁止薬物検出問題まとめ
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・凱旋門賞以降の動向
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| 10/01 |
凱旋門賞に出走したディープインパクトは3着に終わる。 |
| 10/04 |
JL6462便でディープインパクトが帰国。 |
| 10/10 |
着地検査のため東京競馬場に入厩。 |
| 10/11 |
年内いっぱいでの引退が発表される。 |
| 10/13 |
凱旋門賞で3着したディープインパクトのレース時(後?)にとった尿から、禁止薬物に指定されている「イプラトロピウム」が検出されたとの連絡が、仏競馬統轄機関であるフランスギャロから、JRAパリ事務所に届く。 |
| 10/18 |
検査用の検体(尿)は2種類(A検体、B検体と呼ぶ)採取されており、まずA検体から禁止薬物が検出された(仏にて検査)。A検体が陽性を示した場合、同じ時に採取したB検体が別の場所で検査される。しかしB検体もやはり陽性を示した(香港にて検査)ことで、禁止薬物の検出が確定した。 |
| 10/19 |
JRAが緊急会見し発表。状況次第ではJRAが追加処分をする可能性も示唆したものの、同時に国内でのレースへの出走については問題なしとの見解を示す。 |
| 10/20 |
フランスギャロの広報発表(日本語訳)が公開される。 |
・イプラトロピウムとは
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気管支を広げ、呼吸を楽にする効果がありぜんそく、気管支炎の治療に用いられる。戦いや逃走などの際に働く交感神経の働きが相対的に強まり、興奮剤として作用する。ただ、日本で馬の治療に用いられるケースはほとんどなく厩舎内、診療所にも置かれておらず、JRAは禁止薬物としていない。
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・イプラトロピウムが日本で禁止薬物に指定されていないのはなぜか
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イプラトロピウムは人用のものはあるが動物用のものは日本にはない。馬に使われた実績がないため、禁止薬物には指定されていない。ただ米国では5段階のうち3番目のランクに位置する薬物である。フランスなど欧州では、馬の体内に自然に存在しない全ての物質を禁止薬物と指定している。
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・禁止薬物の検査システム
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スポーツにおけるドーピング検査と同様、競走馬もレースの後に薬物使用の検査が行われる。方法は開催国によって様々だが、レース後に指定された競走馬から尿、または血液を検体として採取。これを二つに分割(A検体、B検体)して検査機関に送られ、このうち最初のA検体から薬物が検出されると、保存されていたB検体に同じ薬物が存在するかを確認する方法で、日本やフランスなど世界の競馬開催国で広く採用されている。 |
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原因(犯人探し?)については色々取りざたされていますが、今日の
MSN毎日イントラクティブによればあくまでこれは故意ではなく、投薬ミスの可能性が高いと指摘されています。
ギャロのルイ・ロマネ専務理事は「投薬はフランス人獣医師によって行われたが、処方せんには明確に投薬停止期日が記載されている。獣医師は投薬作業を逐一管理するわけではなく、それは厩舎の調教助手か、厩舎作業員に任される。彼らが投薬期日の指示を誤ったようだ」と、期日後も投薬が続けられたとの見方を示唆している。
色々な情報を集めてみても、この停止期日を過ぎても投薬し続けたことが原因と指摘しているメディアが多く、おそらくこれが真相なのだと思われます。以前サクラローレルが同じくフランスに遠征した際、レース中に右前屈腱不全断裂を発症し、フランスの獣医師から「予後不良級のケガだから、安楽死の措置をしてもいいか」と聞かれた小島良太調教助手が、同意しかけて真っ青になったというエピソードがあります。いずれも言葉が通じない国での「不幸な事故」と言えないこともありませんが、あまりにお粗末な話です。
しかし仮に「今回は」故意ではなかったとしても、この騒動でディープインパクトのこれまでの成績自体、疑問を感じる人が出てきてしまうのは、当然避けられないところでしょう。正直に言えば私もこの話を最初に聞いた時は、「やっぱりそうだったのか」と思ってしまいました。例えば今年の天皇賞・春など3200Mのレースでありながら、「14-14-4-1」という強引な捲りを打った上で33.5で上がってきましたし、昨年の菊花賞にしても次位のそれを1秒近く上回る33.3を記録しています。距離を考えればあまりに常識外れの内容ですし、今回の騒動を見れば「!」と思われても仕方がないでしょう。
近年、増えているのは病気治療用の医薬品の応用。例えば喘息(ぜんそく)治療薬の一種は健康な選手が服用しても呼吸能力が高まる。冬季競技に特に効果を発揮するものとして禁止薬物になっている。
nikkansports.com BLOG 健康連載「【番外編】ドーピングには最新技術フル稼働」
(2006/09/18付)
今回指摘されたような呼吸器系の薬物というのは例え人間向けであっても、ある程度同様の効果が馬に対しても期待できるそうです。イプラトロピウムが国内で禁止されていない理由は、「馬用の薬物の流通経路がなく使用された実績がないため」であって、薬物自体が競走能力に影響を与えないと判断した上で、使用を「認めている」わけではありません。もしディープインパクトがイプラトロピウムではないにしろ、同様の効果が得られる薬物を、治療目的以外の意図で常用していたとなれば、これはモラルに関わる問題になってくるでしょう。
今回のディープインパクト凱旋門賞出走に関しては、フランス競馬界全体から多大な協力を受けました。ディープの滞在先にしても現地の厩舎に頼んでいるわけですし、レース当日はディープインパクト専用の馬券販売窓口や、日本語の通じる場内案内所の設置、専用マークカードの作成などなど、ありとあらゆる対応をしてもらいました。それにも関わらずこちらはと言えば、ルールを無視した大量のレープロ強奪行為や、場の空気をわきまえない大騒ぎなどで、内外から大きな批判を浴びた上に今回の禁止薬物使用騒ぎ。フランスの伝統と誇りである凱旋門賞の場に「
汚点を残した」と指摘されても、仕方のないことではないでしょうか。
今回の騒動が「不注意から来たミス」であって故意ではなかった。日本国内では禁止薬物ではないし、常用もしていない・・・。いくらそう弁解したところで、「史上最強馬ディープインパクトから禁止薬物検出」のインパクトはそれだけで大きすぎました。競馬ファンはともかく、それ以外の人の中には、「ディープインパクト=ダーティー」という印象を持ってしまった人も多いはず。せっかくここまで積み上げてきた実績が、たったひとつのミスによって音をたてて崩れ去っていく。そんな社会の縮図を見た気がします。
ディープインパクトがこの汚名を返上するチャンスは、もう最大で3戦しか残されていません。そしてその3戦は全てこれまで以上のパフォーマンスを要求されることになるでしょう。仮に一度でも負けたら「神話」は即完全崩壊を向かえるかもしれません。2年以上にわたって全力で走り続けてきたディープインパクト自身が、気がついてみたら最大のピエロであり被害者になってしまっていた。そんなむなしさを感じずにはいられません。